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2021年3月9日 15時00分 JST
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Source: Fujitsu Ltd
理研と富士通、スーパーコンピュータ「富岳」完成、共用開始

東京, 2021年3月9日 - (JCN Newswire) - 理化学研究所(理研)と富士通株式会社(富士通)が2014年から開発・整備を進めてきたスーパーコンピュータ「富岳」[1]は2021年3月9日に完成を迎えました。

また理研と高度情報科学技術研究機構(RIST)は、「富岳」を広く学術・産業分野向けに提供するため、同日から共用を開始しました。

1. 経緯

「富岳」は、文部科学省が推進する革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の中核システムとして、開発・整備を進めてきたスーパーコンピュータです。

理研と富士通は、2014年から共同で「富岳」の開発に着手し、2020年5月にすべての筐体の搬入を終了し、その後、共用開始に向けた開発と利用環境整備などを進めてきました。

その間、スーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」[2]「HPCG」[3]「HPL-AI」[4]「Graph500」[5]の4部門において、2020年6月と11月の2期連続で世界第1位を獲得(注1)、(注2)するとともに、「スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム」や「新型コロナウイルス対策利用」などで2020年4月より試行的に利用(注3)されています。これらの試行的な利用の中で、すでにゴ-ドン・ベル賞[6]ファイナリストとして「大規模数値流体シミュレーションに関する研究」(注4)および「史上最大規模の気象計算」(注5)が選出されました。また「ウイルス飛沫感染の予測とその対策」の研究などは人々の生活様式の変容を促しており、「富岳」は科学とSociety5.0を支える情報技術基盤として着々と成果を上げつつあります。

ついては今後も、「富岳」の運用において協力して安定稼働に努めるともに、世界一の運用技術の開発、利用環境の高度化、スーパーコンピューティング技術の開発や提供などを通じ、社会的課題の解決や最先端研究の加速などに貢献していきます。

また、登録施設利用促進機関[7]であるRISTは、「富岳」の共用開始以降、「成果創出加速プログラム」の継続とともに、幅広い研究者などが即時に本格的利用を開始できるよう、一般公募を行い2021年度の一般利用・産業利用課題74件を採択(注6)しました。さらに、今後の「富岳」利用拡大にむけて、早期成果創出を狙う小規模な課題、アプリケーションの動作検証や性能評価を試行する課題の2種類を随時募集中(注7)です。

2021年3月9日、「富岳」はすべての準備を整え、広く学術・産業分野などに計算資源を提供するため共用を開始しました。

2. 「富岳」の利用と今後の展開

「富岳」はスーパーコンピュータの世界ランキングにおいて2期連続の4冠獲得など、その卓越したポテンシャルにより下記手法を駆使して社会的・科学的課題の解決と超スマート社会Society5.0の実現を図ります。

- シミュレーション
最大でスーパーコンピュータ「京」の100倍のアプリケーション実効性能により「高解像度」「長時間」「大規模」「多数ケース」のシミュレーションが可能。身近な社会的課題の解決から、基礎科学の理解に至る様々なインパクトがもたらされると期待。

- AI(人工知能)、データサイエンス
次世代の深層学習によるAIは莫大な計算量を要するため、大規模なスパコンが必要。「富岳」は深層学習の中心である「畳み込み演算」の性能が高いCPUが、通信性能のよいネットワークで接続されており、AIやデータサイエンスの研究にも活用されることが期待。

- シミュレーションとAI・データ科学の融合
シミュレーションに必要なパラメータのAIによる探索、時間を追うシミュレーションの「続き」をAIにより実施、多数のシミュレーション結果を学習データとしてAIが活用、といったシミュレーションとAI・データ科学の融合を世界最高水準で実施することが可能。

これらの手法を通して、以下のような成果が期待できます。

- 高速・高精度な創薬シミュレーションの実現による新薬開発加速化
- 医療ビッグデータ解析と生体シミュレーションによる病気の早期発見と予防医療の支援実現
- 気象ビッグデータ解析により、竜巻や豪雨を的確に予測
- 地震の揺れ・津波の進入・市民の避難経路をメートル単位でシミュレーション
- 太陽電池や燃料電池の低コスト・高性能化や人工光合成メタンハイドレートからメタン回収を実現
- 電気自動車のモーターや発電機のための永久磁石を省レアメタル化で実現
- 次世代産業を支える新デバイスや材料の創成の加速化
- 飛行機や自動車の実機試験を一部代替し、開発期間・コストを大幅に削減
- 宇宙でいつどのように物質が創られたのかなど、科学の根源的な問いへの挑戦

3. 関係者のコメント

(理研 松本 紘理事長)
2014年に本格的な開発を開始し、2020年4月から調整運転をしつつ未完成ながら新型コロナウイルス感染症研究に力を発揮してきたスーパーコンピュータ「富岳」が、ついに完成致しました。2021年3月9日より共用を開始し、学術・産業分野の皆様に向けて広く、その計算資源を提供して参ります。
共用開始はスタートラインであり、「富岳」が真に力を発揮するのはこれからです。世界ランキングで2期連続4冠を成し遂げた世界トップの性能と、Armアーキテクチャによる汎用性を武器に、「富岳」の活躍の場を無数に広げていきたいと思います。
何より、「富岳」は国家基幹技術です。健康長寿社会の実現、防災やエネルギー問題への対応などで先端的な研究成果をもたらすとともに、Society5.0、超スマート社会の実現を通して国民の皆様の期待に応える成果を届けて参ります。また、ユーザーの皆様に最高の計算資源と利用環境を提供すべく、引き続き責任を持って「富岳」を運用し、より高度化するための研究を進めていく所存です。

(RIST 田島 保英理事長 )
超高性能電子計算機「富岳」が愈々本格稼働します。この、人類が手にした史上最強の「外部脳」によって、これまで人類が挑んだ極微の物質の根源から時間・空間の無限に至る知の探索を始め、生命、生活、産業、社会の構造理解と機能解析、厳密予測、そして未出現の人類史を設計することまでも可能性の輪が大きく拡がることが期待されます。多様な利用者の使い易さを旨としつつ「富岳」の装置ポテンシャル発揮を最大化することを目指して、RISTは登録施設利用促進機関の使命を果たす所存です。

(富士通 時田 隆仁代表取締役社長)
「富岳」の共用開始を無事迎えられたことは、開発に携わった富士通にとっても大きな喜びです。「富岳」は、世界ランキングで初めて4冠を獲得したように、従来スーパーコンピュータが得意とするコンピュータシミュレーションに加え、ビッグデータ分析やAIなどでも高い性能を有しています。今後、「富岳」が新たなイノベーションや価値を創出する基盤として本格的に利用され、様々な社会課題の解決に繋がる成果が創出されることを心より期待しています。

(理研 計算科学研究センター 松岡 聡センター長)
「富岳」は、その最初の構想から十年あまり、日本のスパコン分野の数多くの産官学の精鋭が集まり、「アプリケーション・ファーストで世界トップクラスの性能と幅広い活用領域の両立」を目指して研究開発が進みました。その成果として、我が国が最先端の高性能汎用CPUを開発するなどIT技術で世界をリードし、かつ、対新型コロナウイルスへの活用に代表される様々な応用の成果が既に生まれています。今後も、本センターでは「富岳」がSociety5.0の中心的な基盤として活躍し、更なる科学技術や産業への貢献が行えるよう、引き続きその高度化の研究開発を行い、計算の未来を科学的に探求していく予定です。

4. 補足説明

1) スーパーコンピュータ「富岳」
「京」の後継機。社会的・科学的課題の解決で日本の成長に貢献し、世界をリードする成果を生み出すことを目的とし、電力性能、計算性能、ユーザーの利便性・使い勝手の良さ、画期的な成果創出、ビッグデータやAIの加速機能の総合力において世界最高レベルのスーパーコンピュータ。
15万8976個の中央演算装置(CPU)を搭載し、1秒間に約44京2010兆回の計算が可能。2020年6月と11月に世界のスパコンランキング「TOP500」「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」で2期連続の世界一位を獲得した。

2) TOP500
LINPACKの実行性能を指標として世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクト。LINPACKは行列計算による連立一次方程式の解法プログラムであり、高いスコアは計算能力と信頼性を総合的に示していると一般的に言われている。

3) HPCG
産業利用など実際のアプリケーションでよく使われる、疎な係数行列から構成される連立一次方程式を解く計算手法である共役勾配法を用いたベンチマーク。

4) HPL-AI
LINPACKベンチマークを改良し低精度演算で解くことを認めた、新しいベンチマーク。近年、GPUや人工知能向けの専用チップで低精度演算(10進で5桁、もしくは10桁)の演算器を搭載し、高性能化した計算機が多数現れていること背景に、ジャック・ドンガラ博士を中心として2019年11月に提唱された。

5) Graph500
実社会における複雑な現象は、大規模なグラフ(頂点と枝によりデータ間の関連性を示したもの)として表現される場合が多い。こうした多種多様な応用を持つグラフ解析の性能を競うベンチマーク。

6) ゴ-ドン・ベル賞
その年において、高性能並列計算を科学技術分野へ適用することに関してイノベーションの功績が最も顕著な研究に与えられる賞。

7) 登録施設利用促進機関
「特定先端大型研究施設の共用の促進」に関する法律に基づき、「富岳」の研究課題の選定、利用支援、研究成果の公開など、利用促進業務を行う機関。

本リリースの詳細は下記をご参照ください。
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2021/03/9-1.html

概要: 富士通株式会社

詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。

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